Fender Custom Shopとは?

Fender Custom Shop Guitar
Fender Custom Shop

Fender Custom Shopは1987年にFenderコロナ工場内に作られたセクションです。Fenderの中でも優れたビルダーでのみ構成されており、大量生産を行うレギュラーラインとは異なる木材や工程により、レリック加工からアーティスト本人が使用するモデルまで手掛けています。

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設立の目的

少し、Fenderの歴史をたどりたいと思います。

Fenderの創業者であるレオ・フェンダーの体調不良があり、1965年にテレビ/ラジオのネットワーク会社であるCBSに売却されます。しかしCBSが目指す多角化はうまくいかず、後のCEOとなるビル・シュルツに声がかかります。元米ヤマハの経営者であったビル・シュルツであっても、右肩下がりのFenderを再建するのは相当難しかったようです。しかし、1985年にビル・シュルツが中心となりCBSからFender社を買い戻すことでFenderが好転し始めます。この時には、日本の山野楽器等も出資しています。

CBS期に品質低下のイメージがついていたFenderを元のより良い品質に変える目的で1987年にFender USA 内にFender Custom Shopが設立されました。この当時から、優れたビルダーのみによってCustom Shop製品は作られており、品質低下が謳われていた設立当初でも素晴らしい個体が多く見られ、市場でも高い評価を受けています。その他にもビル・シュルツはメキシコ工場、コロナ工場、フェンダージャパン等、現在のFenderの基礎となる多くの部分を手掛けています。Fenderの中でも負の歴史と言われることの多いCBS期ですが、元々、米ヤマハの経営者であったビル・シュルツに目を付けたのはCBS最大の功績かもしれませんね。

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Master Builderとは?

Fender Custom Shopには設立当初から他のブランドにはない役職が設けられました。それがMaster Builderです。Master Builderは、Fender Custom Shop内でも特に優れた技術を持つビルダーにのみ与えられる役職で、Custom Shop設立当初はCustom Shop製品の品質管理だけでなく、レギュラーラインの品質管理や技術指導も行っていました。結果としてFender製品の品質はみるみる向上し、現在でも、元シニアマスタービルダーであるマーク・ケンドリックがFender全体の品質管理を行っています。現在のMaster Builder達は、アーティストへの楽器製作やMaster Builder本人の手によって作られるMaster Built Series(MBS)の製作等を行っています。

Master Builderになっている人物は誰?

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Fender USAとの木材の違い

Fender Custom Shop内で使用される木材は、レギュラーラインとは異なり選別されています。Fender全体に入荷された大量の木材の中から、Fenderの基準によってレギュラーライン用/Custom Shop用と分けられています。また、Custom Shopに納品されると、まずはMaster Builderが直接材の選定を行い、その中から好みの材をそれぞれにストックしています。つまり、Custom Shopで使用される木材はレギュラーラインよりも選定されたもので、Master Built Series(MBS)で使用される木材は更に厳選された木材が使用されているのがわかります。

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Relic/エイジド加工

Fender Custom Shopの中でTime Machine SeriesとしてRelic仕様の楽器が制作されています。1987年のCustom Shop設立時にはTime Machine Seriesは存在しなく、2009年のリニューアル時に誕生しています。

Relicが初めて販売されたのは1995年と言われています。1994年当時、マスタービルダーであったJ.W.Blackとエイジド加工を行っていたVince Cunetto(ヴィンス・クネット)の出会いから始まります。Vince Cunettoが個人的に行っていたエイジド加工をRelicと命名し、1995年にFender Custom Shopでプロトタイプを製作しています。そのプロトタイプが好評だった為、1995年から1999年頃の間、Fender Custom Shopのレリック加工を外注という形でVince Cunettoが担当します。その後、現在のTime Machine Seriesとしてリニューアルされ、Relicの種類も増え、経験を増すにつれよりリアルなRelic加工となっています。

Relicの種類

Relicにはその程度に応じて複数種類の仕上げ方法があります。Fender発行の認定書には一般的に”Relic”の記載のみですが、オーダーシートを見ると”Finish Package”という項目があり、そこにHeavy RelicなどRelicの程度も記載されています。しかし、日本国内の流通ではこのオーダーシートは付属しないのが一般的です。

次にギター本体にはどんな表記がされているかですが、結論から言うとケースバイケース、悪い言い方をすると”メチャクチャ”です。特にNOSの場合、認定書にNOSと記載されていても、ボディーには ①何も記載されていない ②NOSの刻印あり ③Relicの刻印あり ④NOSとRelicの刻印ありなど様々で、ネック側も①何も記載されていない ②Relicの刻印あり となっています。

NOS(New Old Stock)

当時新品で製作された楽器が全く使用されず、傷や経年変化もないまま保たれている状態を再現しています。

Closet Classic

当時新品で製作された楽器を使用せず長期間保存される中で起きた経年変化を再現しています。ラッカー塗装のウェザーチェック(クラック)や金属パーツのくすみが再現されています。

Journeyman Relic

普段はケースにしまっているギターをたまに取り出し、軽くしか使用されてこなかった状態を再現。

Relic

長期間使用してきた傷や経年変化を再現。

Fender Custom Shop 1960 Stratocaster Relic Dakota Red Matching Head

Relic仕様です。小さめの塗装の剥がれやピックガードの焼け、金属パーツの錆が見られます。

Heavy Relic

Relicよりもハードに使われていた個体を再現しネックの塗装剥がれ等が見られる。

 Fender Custom Shop 1967 Stratocaster Heavy Relic Black 2016

Heavy Relic仕様です。普通のRelicに比べ木部が大胆に見えています。

Ultimate Relic

Heavy Relicよりも激しくボロボロになるまで使い込まれた個体を再現。

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木工加工とセットアップ

木部加工はレギュラーラインと同じ工場内部で行われていますが、その方法は異なります。レギュラーラインの製品は殆ど製品と同じ形のところまで、NCルーターによって大量加工されますが、Custom Shop製品は大まかな外周まで切り出した後にほぼ手作業によって加工が行われます。ボディー角のアール、エルボーやバックのコンター加工は全て手作業です。ネックの形もざっくりとルーターで形どったあとに、ノギスで測りながら手作業で仕上げられています。Custom Shopのネック製作を行っている壁には各年代やアーティスト毎の大量のネックサンプルがかけられており、それらを基準に加工が行われています。フレットの打ち込みもレギュラーラインは機械で行われていますが、Custom Shopは昔ながらの方法による手作業です。製作過程はほぼヴィンテージと同様で、Fender発足当時になぞって作られています。

各部パーツの取付け、ネックのセット、ナットの加工から各部のバランス調整まで最終的なセットアップもCustom Shopでは専任のビルダーのみが行っています。また、Master Builderたちには専用の作業スペースであるベルダーベンチが一人一人に設けられており、Master Built Seriesはそちらで仕上げられています。

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